切絵 広重・国芳・豊国_東海道五十三對 22_國芳_藤枝      

熊谷(くまがへ)次郎直実仏門に入(いり)て上洛し 黒谷の法然上人の弟子となり
蓮生法師と改め故郷へかへる道 藤枝の駅に宿(しゅく)せし家にて鳥目壹〆文(てふもくいつくわんもん)
を上洛まで借用して其質物(しちもつ)に十念を授け 故郷へ帰り 其後(そのヽち)
又上洛の砌(みぎり)壹〆文を返し 預け置し十念を 今又我に給ハれといふに
いと安き事 と十念を返す 不思議なるハ 初め十念を受し時 池に蓮華十茎(とくき)咲出たるが
今返す時念佛一遍に一莖づヽ消失たり 此奇特を感じ 責(せめ)て一ぺんハ我に残し給ハれと願へバ
念佛一遍を与へ上洛しける 夫(それ)より此家を寺となし 蓮生寺と号するなり