切絵 広重・国芳・豊国_東海道五十三對 20_廣重_丸子 手越の古驛

蔦の細道神社平(たいら)の上(かミ)の方(かた)に
猫石といふあり 古松六七株の陰に 猫の臥(ふし)たる形に似たる巨巌(こがん)あり
其昔 此所に一ツ家ありて 年ふる山猫老女に化(け)し多くの人に害をなし 人民を悩せしに
天命逃れず終に死して其霊石と化す と世俗にこれを言つたへけれども
其証詳かならず手越の古駅ハ丸子の東にして あべ川の西岸(さいがん)にあり
むかし 中将重衡囚れて鎌倉に下り給ふ時 此所に宿り給ふ 頼朝公深く痛(いたハ)り
手越の長者が娘千壽(せんじゅ)の前といへるを御伽(おとぎ)に付(つけ)られける
此女眉姿(ミめかたち)心様も優にして 糸竹の道さへ勝れ 琵琶琴
或ハ今様の白拍子を舞て心を慰めわかれけるが 重衡討れ給ふときヽ 墨の衣にさまをかへ
信濃の國善光寺にて後世(ごせ)のぼだいをとむらひける 千壽の遺蹟 今も残れり岡部
蔦の細道神社平(たいら)の上(かミ)の方(かた)に 猫石といふあり 古松六七株の陰に
猫の臥(ふし)たる形に似たる巨巌(こがん)あり 其昔 此所に一ツ家ありて
年ふる山猫老女に化(け)し多くの人に害をなし 人民を悩せしに
天命逃れず終に死して其霊石と化す と世俗にこれを言つたへけれども 其証詳かならず